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602/Life style

ジョナス・ベンディクセン

ジョナス・ベンディクセン_b0038378_15221822.jpg食べそびれていたものがあれば、読みそびれていたものもありました。それはルパンの愛読書Pen9/1号。愛媛と神戸の別居状態だったので、仕方が無いといえばそれまでですが、ようやくのんびりと雑誌を眺められる幸せを噛み締めつつ表紙を見て歓喜しました。昨年、衝撃を受けたジョナス・ベンディクセンが特集されているではありませんか。この号、ルパンが買わなくても私が買っていたでしょう。

ジョナス・ベンディクセンは、 1977年のノルウェー生まれ。マグナムの新鋭として注目されるフォトジャーナリストです。同い年にこんなにすごい人がいると、自分の人生を改めたくなります。それは無理だとしても、もう少し毎日の生活に真摯に向き合っていかなくては、と思ったり。

彼の最も有名な作品は、「The Spaceship Junkyard. 2000」の中の一枚でしょう。白い蝶々が飛ぶ草原で遊ぶ子供たちをとらえた印象的な一枚です。はじめて出会った瞬間、そのあまりの 衝撃に言葉も出ず見入ってしまったことをよく憶えています。

この写真には美しいだけではないものが写っているのです。とても幻想的な美しいシーンのように見えますが、実は子供たちが遊んでいる場所は、放射能に汚染された旧ソ連のソユーズ(ロケット)の残骸。その残骸からは、人体に有害な科学物質が放出され続けているのです。こんなにも穏やかで平和に満ちているように見えるのに、本当はとても恐ろしい場所。解説では、子供たちはそんな残骸からアルミを剥がし、売ったり鍋に加工すると述べられています。

よくコメントされることですが、彼の写真はいわゆる報道写真とは違って、銃を持った人々や傷ついた人々などはあまり出てきません。鮮やかな色や美しい町や自然の風景、そしてそこで暮らす人々、報道写真といって想像するそれらとは一瞬距離があるかのように見えるものです。しかし、それぞれの背景を考えながら一枚一枚を見ていくと、紛争そのものの写真を見るよりもより、心に響くものがあるのです。それはとてもとても強いメッセージのように思います。

ジョナス・ベンディクセン_b0038378_15264233.jpg『Satellites: Photographs from the Fringes of the Former Soviet Union』写真集が出ています。990年代に旧ソ連から独立宣言を行った、トランスドニエストル共和国の人々や風景の写真を収録したものです。表紙はもちろん、あの一枚。胸を掴まれるような一冊です。
by tmk_hys | 2006-09-12 19:21 | Book